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悔しさをバネに、最善の治療を提供したい

木村 修

Kimura Osamu

TV Archive

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目の前の患者さんの問題点を徹底的に分析

医師としての出発点は小児外科ですが、現在は「がん免疫療法」の普及に取り組んでいます。当院を訪れる患者さんは「抗がん剤が効かない、治療法がない」といった方々がほとんど。ですから、私はまず、患者さんの病態の徹底的な分析から始めます。それを繰り返していけば問題点を浮き彫りにし、最善の治療方針を決めることができるからです。 実はこの治療法に出合った頃は、必ずしも良い結果を得ることができませんでした。しかし、目の前の患者さんを救うべく懸命に治療方法を模索した結果、劇的に効果をもたらす方法を見出したのです。その後、その効果をさらに高めることや、患者さんによって効果がばらつかないような工夫を重ねた結果、一定の成果を出せるようになりました。 この治療法は、根拠のない、いわゆる統合医療などと言われるものではありません。あくまでも科学的に、真面目に取り組んでいる真摯な治療法の一つです。それだけに、患者さんに対しては、治療できる可能性がある限りスタッフ全員で一緒に戦い続ける。そういうチームワークを大切にしています。

仕事の上で大切にしているのは、既存の方法にとらわれず、目の前の患者さんに最善の治療法を適切な形で提供していくことです。治療効果が本物でないと、医療に関する経営は根本から崩れてしまいます。ですから、あくまでも治療成績の向上を目指し、治療内容の充実を図っていくことに努めています。 例えば、目の前の川で溺れて死にそうな人がいたら、なんとか助けたいと反射的に思うのが普通だと思うのです。助けられない言い訳を探すことはありません。しかし、これを病気に置き換えると、治療が困難であればあるほど、多くの医師は目の前の現実から顔を背けて、言い訳をしながら逃げてしまいます。 しかし、患者さんは助けを求めて医師の元を訪れます。ですから、たとえ治療に成功しなくても、ご本人やご家族と意識を共有して試合に臨む。いわば、チームになって困難に立ち向かう。そういう姿勢を崩さなければ、少しずつでも前に進むことができるはずです。

仕事を続けていく上で支えになっているのは、「悔しさをバネにしていること」だと思います。当院では幸運にも、半年に1回ほどの高い頻度で治療方法が劇的に改善してきています。その背景を探ると、順調に推移した患者さんよりも、むしろ助けることができなかった患者さんの状態を徹底的に調べていることが大きな要因になってことが分かります。 医療の世界は、進化していくたびに「今の方法が使えたら、半年前のあの患者さんの命を救えたかもしれない」という思いに苛まれます。がんという病気だけでなく、最先端で治療開発に携わっている医師には、宿命のように付いてくる「生みの苦しみ」の一部です。今回は残念ながら助けられなかったけれども、その治療方法を次につなげることでリベンジする。 まさに「悔しさがバネになっている」。それは次に進むための原動力でもあります。上質な仕事に臨むための大切な心掛けです。

私の考える「上質な生き方」とは、嘘をつかず、変な自己顕示欲や嫉妬心を持たず、ひたすら目の前の患者さんの問題に取り組んでいくことです。そして、それを通じて、患者さんの役に立つことが私自身の上質な人生につながっていくと信じています。

人生をさらに実のあるものにし、視野を狭めないためには、適度な気分転換が必要です。しかし、これまでなかなかそういう余裕はありませんでした。そこで最近始めたのがサイクリングのロングライド(60㎞~100㎞)です。医療サポートの一環で、小さなお子さんと一緒にペダルをこぎます。運動不足による体力低下を招かないように始めたのですが、お子さんの医療サポートにもつながるので、まさに一石二鳥だと思います。 今後は、さらに良い免疫反応を出せる細胞作成のための培養方法の工夫や、自由診療の費用面の問題を支援する基金の設立などにも力を入れたいと考えています。

木村 修

http://yamateca.jp/
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