https://refinad.jp/wp/wp-content/uploads/2022/07/main.jpg
ON AIR

マグネシウムで世界を変えることが目標

宮本 隆

Miyamoto Takashi

TV Archive

TV Archive

大企業になることで人々の幸せに貢献したい

弊社は、1966年に自動車部品の下請け加工会社として創業しました。創業者である父のモットーが「浮気をしない」だったため、継続していただいている発注者の仕事だけをコツコツと続けていました。時代の波にもまれながらも頑張ってきたのですが、下請けの悲哀といいますか、毎年コストダウンの要請が来るのですね。10年間、要請に従い続けてきたのですが、ふと計算してみたところ、タダでやってくれと言われているようなものだという事実に気づき、愕然としました。このままでは、経営が危うくなってしまう。そうならないようにするためにはどうしたらいいかを考えたとき、商品に自分で値段を付けられる仕事をしなければいけないと思ったのです。

自社製品を作ると決めて浮かんだのが、今から40年ほど前に出会ったマグネシウムでした。そこで、マグネシウムを使った製品を作って世に送り出してきたのですが、これといったヒットはなし。そんなとき、従業員がマグネシウムの切子と水が入ったドラム缶で手を洗っているところを目撃し、目を見張りました。油だらけだった手から油分が落ち、きれいになっていたからです。これをうまく利用する手はないかなと思い、試行錯誤を重ねた結果、出来上がったのが洗たくマグちゃんです。商品名の通り、洗濯をする際に使用する製品です。純度99.95%、大きさ5mmの粒状のマグネシウムが、メッシュ状の袋に入っています。それを洗濯機の中に入れると、洗剤を使用しなくても汚れや臭いが取れるという優れものです。今から10年ほど前に販売を開始し、2021年12月時点で累計約750万個売れた人気商品になりました。

この洗たくマグちゃんから着想し、描いているビジネスがあります。日本にいるとなかなか感じることはできませんが、実は世界は水不足で、農業用の水が世界で70%不足しているといわれています。水は逆浸透膜装置で作れるといわれていますが、それができるのはシンガポールやイスラエルのような小さくて、お金のある国くらい。人口の多い国がやろうとすると、大量のCO2を排出することになってしまいます。ここで宮本製作所の出番です。洗たくマグちゃんを使用した排水には、農業の三大栄養素といわれる窒素、リン、カリウムが含まれています。つまり肥料になるということです。コインランドリーで洗たくマグちゃんだけを使用してもらい、わが社がその排水を買い取ります。それを水が欲しいという世界中の国に販売するという計画です。植物栽培用肥料として、日本を含む世界9か国で特許の取得も済んでいます。このビジネスが本格化すれば、多大な売り上げを得ることも夢ではありません。

会社として目指す方向は、ウルグアイの第40代大統領のホセ・ムヒカさんの言葉にあります。「私たちは経済発展するために生まれてきたのではありません。私たちは幸せになるためにこの地球にやって来たのです」。本当にその通りだと思いますし、誰一人こぼれることなく、幸せになってほしいのです。笑われるかもしれませんが、AppleやGoogle、Amazonのように莫大な利益を生み出す会社になり、国にたくさんの税金を納めて、人々を幸せにしたいと思っています。子どもは親を選べません。ですから、せめて高校生くらいまでは、かかる費用のすべてを国に負担してほしい。そのための資金を国に提供できるくらいの会社にすることがわが社の目標です。

平たく言うと、人の役に立つことが上質な人生。私の心の中心にはその価値観があり、常日頃から人のためになることを心掛けています。ですから、洗たくマグちゃんを実際に使った人のお声を聞くと、涙が出るくらいうれしいですね。「アトピーや過敏症が改善した」という話や「部屋干しをしても臭わない」といったようなメールがたくさん届きます。そういうお声が支えになったり、発奮材料になったりして、より良いものを作ろうという気持ちになっています。そういった訳で、仕事をすることが楽しくて仕方ありません。家族から見れば家のこともやってほしいと思っているでしょうが、これほど楽しいことはないので、土日もつい出社して仕事をしてしまいます。もちろん大変なときや苦しいときもたくさんあります。しかし、それが解決したときに、より一層楽しい気持ちになりますから、人生はどちらに転んでも幸せだと思うのです。

PICK UP

Pick Up

隈 研吾