https://refinad.jp/wp/wp-content/uploads/2021/12/main-1.jpg
ON AIR

「救える命と人生を救うこと」が原点

郭 水泳

Kaku Suiei

TV Archive

TV Archive

「火の鳥プロジェクト」で地震に備え

医師になったきっかけは、同居していた姉夫婦の長男が夜間に高熱を出したときに、深夜に医者を探して苦労したことを経験したことです。この時、救急・救命の仕事をして患者さんや家族を安心させたいと思いました。 ですから、私にとって医療の原点は救急医療です。医師になりたての頃、勤務先の救急病院で、運ばれてきた脳出血の患者さんを診察しました。すぐにでも呼吸が停止する状態だったため、直ちに気管内挿管を行い、緊急手術を決断しました。 「命を助けたい」という使命感しかありませんでした。難しい手術をなんとかこなし、「これで助かる。この人の人生を救った」と自覚して、満足感と幸福感を覚えたものです。同時に「医者になってよかった」とも思いました。

一般的に、医師は外来診察の時や手術後などに、患者さんやその家族に病状や状態の説明をします。しかし、医療現場で行われるコミュニケーションは「話し言葉」なので、当事者の記憶力や注意力の個人差で、意思疎通の結果が大きく異なることがあります。患者さんが忖度して、分からないのに分かったふりをすることもあります。 意思疎通がうまく図れないのは音声で伝え合っているからです。音声は一過性で、記録されない情報なので、意思疎通がうまく図れないのも当然なのです。そこで、私は音声を日本語ワープロに変換するだけでなく、その内容を要約した文章にするアプリ「音声ブレークスルー」を独自に開発しました。特許も取得していて、医療の透明化はもちろん、医療に革命をもたらす技術だと思っています。

ただ単に、音声を日本語ワープロのようにテープに起こしてテキスト化する技術は、すでに一般化されており、商品として販売されてもいます。しかし、その会話から得られた膨大な文章を読み込むのは大変な作業です。「音声ブレークスルー」の特徴は、長い文章から要約文を自動的に作成できる点にあります。まさしく、医療業界における革命と言っても過言ではありません。 このアプリは、無用の医療訴訟を避ける上でも有用です。すでに触れたように、要約文という形で記録しいつまでも保存できるので、仮に後でトラブルになった時には証拠として役立てることができます。これは大きな利点です。 医療訴訟の多くが、「言った、言わない」「そんな意味では聞いていない」といったコミュニケーション不足が原因で起きています。双方の会話が誤って伝わることを防ぐためにも、リアルタイムにテキスト化して、互いに見えるようにすることが大切です。

私が思う「上質な生き方」とは、提唱した「救える命と人生を救いたい」ことの実現に向かって、引き続き努力をして改革を起こすことです。脳の病気は命を助けるだけでは不十分です。四肢のまひや言語障害などの後遺症が残りやすいからです。これらの後遺症は、患者さんのその後の人生を大きく左右することがあります。認知症に陥らないようにすることも大切です。 こうした後遺症から完全に逃れるのは困難ですが、医師が注意すれば、かなりの好結果を期待できます。当院の理念でもある「救える命と人生を救いたい」に照らせば、患者さんを上質な状態で治療することが、医師にとっての上質な生き方に重なるかもしれません。

今後については、東南海巨大地震への備えが大きなテーマとなります。その一環として、2年以内をめどに新病院の建設を計画しています。「火の鳥プロジェクト」と名付けた構想で、「地震後1カ月で救急医療を再開する」ことを目指しています。まさに不死鳥の心意気です。 現在、日本で稼働しているCTの総数は約1万3000台、MRIは約6500台とされています。これらが巨大地震で壊れると、修理や新規購入に3~5年かかるとも言われています。この間はCTやMRIのない診療を強いられます。 しかし、平成以降に免許を取った医師は、CTありきの教育を受けたので、いわば「武器」を取られた状態になります。そこで「火の鳥プロジェクト」では、CTやMRIを設置する部屋に特別な免震構造を取り入れ、超早急に救急医療を再開する体制を整える予定です。 これも「音声ブレークスルー」と並ぶ、医療における革命といえるでしょうね。

PICK UP

Pick Up

隈 研吾